人気者の山本寛監督が、次何をやるか、アニメファンは気になっていたところ。以外に手堅くまとめてきたという印象。
活劇も「エッチ」連発のギャグも楽しく、わかりやすいエンターテイメントになっています。
演出も凄い。丁寧だし、凝っている。キャラクターも魅力的で、花澤香菜さんの演技が凄く、他の人がやると、ネッサはちょっと「ウザい」キャラになりそうなところが、可愛く思えました。
各キャラクター、個性もあるのに、さらっと演出されている。さらっとしていて、泣くようなシーンはありません。ライトで、爽やかな後味になっています。
管理社会VS自由、文明批判、自然賛美になりそうで、ならない。主人公がオールドテクノロジーと呼んでいる、現在の僕たちの文明社会を賛美している。これが、切り口としてはありだし、すごいわかりやすいんだけど、すこしスッキリしなかった。文明を肯定しながら、人間本来の生き方も重視していく。これって、現実社会の実際。主人公の敵ってなんだろうと思ったときに、敵はいなかった。スッキリ感がちょっと少ないのはそのせいかも。ただ、好きな人を守りたい。それは、努力の末報われるので、爽やかな後味になっているのかなあ。
悪漢のバローが、ヒロインと愛し合っていると主張しているくせに、ヒロインを処女検査するシーンがあったり、結局、ヒロインは何が汚れているのかよくわかんない。本番を除く、ギリギリの交渉をしていたということでしょうか。この一連のエピソード、アニメファンの処女信仰に対する「あてつけ」のようにも感じました。『かんなぎ』のヒロインが処女がどうかで、ファンが盛り上がったことに、山本監督も何か言いたいことがあったと思います。
たしかに、アニメファンが処女性に固執しすぎる傾向は、少しいきすぎと思いますが、もし、それに対する意見を作品に入れているなら、ちょっとごちゃこちゃする思いました。
さすがに、それはないのかもしれませんが、引っかかるエピソードではありました。
このストレートな作品に関しては、ヒロインは16歳の処女でよいです。
この作品をどう評価するかは、過去の名作アニメ作品にかなり酷似していることを、どう考えるかだと思います。『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』に加え『不思議の海のナディア』『エウレカセブン』にも近い。また、お父さんとの出会いは『ガンダム』のサイドセブンのエピソードにも似ています。
アニメのオーソリティ、山本寛監督らしい気もしますが、ネタ元が少し有名すぎて、視聴中どうしても気が散ります。
あまり情報誌など見ないので、この作品がなぜ過去作品をなぞったのか知りませんが、オーソドックスな活劇、ボーイ・ミーツ・ガールを作るなら、この形が一番という答えなのか。
ただ、作品評価において、一般的にオリジナリティはかなり重視されると思います。アクション・活劇重視の僕でも、オリジナリティの高い作品は、やはり「ひと味」違うと感じます。『電脳コイル』は活劇ではありませんが、まぶしいオリジナリティで、見た後に「何か」残ります。『東のエデン』はオリジナリティも高く、しかもエンターテイメントしても面白いので、当然評価が高くなります。
この作品は、「あの作品たち」に似すぎていて、せっかくある、オリジナリティも覆い隠されているように思いました。
ピクサーの作品は、毎回オリジナリティとエンターテイメントを両立していて、それは、長期間じっくり作れるだけの資金力、興業力に裏打ちされている面もある。日本のアニメ業界は、常に作り続けていないとメシが食えない。そんな中でクリエイターは奮闘しているので、そのうえ、輝くオリジナリティを要求するのは酷かもしれません。
また、山本寛監督も、その過激なパフォーマンスとは裏腹に、オールジャンル作れる、万能型の監督を目指しているように感じます。そんな監督に、オリジナリティ=作家性を求めるのもお門違いかもしれない。
それでも、ダンスや過激な言動でファンを楽しませてくれる山本寛監督には、すごいものを作ってくれる期待があります。
次も期待しています。