2009年8月29日土曜日

サマーウォーズ

圧倒的な傑作です。
僕にとっては、エヴァンゲリオン以来のインパクトかもしれません。
こんなすごい劇場用アニメは、今後しばらく出てこないでしょう。
細田守監督渾身の力作で、監督自身にもこの作品を超えるものを作るのは難しいかと思います。

最近僕は仕事が激務で、睡眠時間が少なく、しかもビールを飲みながらの視聴なので、ちょっと頭は怪しかったですが、それでも、言い過ぎではないと思います。

この作品には、ボーイミーツガール、家族愛、人類愛など、普遍的要素と、斬新なストーリーと映像、日常ドラマに、派手なアクション、コメディにスポ根、おおよそエンターテイメントに必要な要素がすべて詰まっています。
自分のことしか考えないという、今の社会風潮に対して、警鐘を鳴らしていたりもする。
とにかく、ヒットする要素が盛りだくさんです。
こんな作品を作ってくれたスタッフの方々、感謝いたします。

以下、さらに好きなことを適当に書きます。

この作品は、日本人をジブリ作品の呪縛から解き放つ作品になると思います。
昔のジブリ作品があまりにもすばらしかったため、ジブリというだけで、面白かろうが面白くなかろうが客が入る。今まで、長い間ジブリ映画に変わるアニメ映画がなかったのですが、時かけの成功と、この映画の持つパワーは、「夏のアニメ映画はジブリで決まり」という閉塞感を叩き壊すのに十分です。
若い、すごい監督が作った面白いアニメ映画に、オタクじゃない、普通の人が、お金を払って劇場に見に行く、好ましい状況を作ってくれると思います。
制作委員会に、ジブリと同じよみうりテレビが入っているので、もしかしたら、ジブリ映画に変わる映画を育て、それが成功したという、狙い通りの状況なのかもしれません。ま、ビジネス的に、狙ってできる映画のレベルではないとも思います。

作品についてもう少し。

僕は『時をかける少女』は、丁寧に作ってある印象はありましたが、ちょっと苦手なタイプの作品で、あまり楽しめず、世の中がなぜそんなに細田守監督を好むのかちょっとわからなかったです。
今回の作品はわかりやすいエンターテイメントで、時かけより、だいぶユーザー層が広いように感じます。僕もその広がったユーザー層に入ったわけです。
また、細田監督の特徴として、『古臭さ』があると思います。日常ドラマを描いた作風も古臭さを感じさせますし、変身少女やお色気で鼻血など、日本アニメの伝統的な演出のシーンが数多くあります。
敵は、知識欲を持ったプログラムなのですが、こいつもよく考えれば、とても古典的なスタイルのラスボスです。
最近のアニメで描かれるプログラムやウィルスは人間のように生物的で、自己増殖や、生存本能といった面が強く描かれることが多いと思います。つまり、自分をどんどんコピーしていき、異物をどんどん取り込んで、多様性を持つことで、種として生き残ろうとする。
ところが、この作品のプログラムは、とにかく他者を食らい大きくなることで、強い固体になっていく。こういう進化だと、1つの天敵の出現で絶滅してしまう可能性があり、生存目的だとあまりよろしくない。
この敵は、生存目的ではなく、とにかく貪欲に知識を集めるだけの存在です。つまり、富を独占する暴君で、非常に古典的な悪役であるわけです。
知識を集めるのに死んじゃったらダメなんで、生存本能も必要だと思いますが、作品としては、このぐらいのバランスの敵ということでしょう。花札が弱すぎるのが少し気になりましたが。
作中にも温故知新を描いたシーンが数多くありますが、細田監督自身も古い感性と、新しい感性の両方を兼ね備えた監督だと感じました。優れたクリエイターの条件として、この古い感性と新しい感性を併せ持つということは、かなり重要なのかもしれません。
また、この細田監督の作風が、ちょうどジブリのアニメを好む層、日本人の多くの人と一致します。
キャラクターも影を入れない淡色で、貞本氏を起用していても、いわゆるオタク向けの絵でなく、一般の大人でも嫌悪感を感じないように作っていて、かなり、大衆を意識したつくりになっています。
作品を通して貫かれている、人間愛、人類愛も、誰にでも受け入れやすい、感動しやすいテーマだと思います。人を性善とする意思が強く伝わってくる映画です。

神山監督、磯監督の作品ように、ネット社会を舞台にする作品がどんどん増えています。
やっぱり映像的に刺激的なんでしょうね。
みなさんの描き方が非常にバラバラなのが面白いですね。

この作品を期に劇場用アニメが盛り上がって、お客さんがどんどん増えると嬉しいです。

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